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“M” STAINLESS BOTTLE STORY
muraco 村上卓也 × リバーズ バキュームフラスク ステム

 

 

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発売以来、その削ぎ落されたデザインから、多くのブランドとのコラボをはたしてきた真空ステンレスボトル「バキュームフラスク ステム」。そのなかでも、コラボレーションの枠を超えて、自分たちだけのオリジナルを目指したのが、アウトドアブランドmuracoと手がけた「Mステンレスボトル」です。その唯一無二を目指したストーリーを、muraco代表の村上卓也さんにうかがいました。

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コラボレーションを超えたい

アウトドアの総合ブランドとして、ここ数年、キャンパーたちの話題の中心にいるmuraco。その名前を知らない人も、キャンプ場でひと際目を引くブラックのテントを目にしたことはあるはず。業界のタブーを壊すなどデザインの概念をキャンプサイトに持ち込んだ革命児。そのmuracoとリバーズが共につくりあげたボトルがある。

 

“M” STAINLESS BOTTLE / muraco

 

直訳すると「Mと刻印されたステンレスボトル」。その削ぎ落とされた製品名には、ひとつのプロダクトにブランド名を刻むことに対しての覚悟が込められている。今回はmuraco代表の村上卓也氏に特別にMステンレスボトルが誕生したエピソードをうかがった。

 

 

「正直、コラボレーションにはあまり積極的ではないんですよ。…なんて言ったらまた誤解されそうだけど(笑)。ブランドが軟派に見えることはやりたくない」

 

金属加工の会社を父から引き継ぎ、その新規事業として立ち上がったmuraco。ブランドポリシーのひとつとして「他社製品の付属品になるような製品はリリースしない」ことを掲げており、常にまだ世にない価値、自分たちだけのオリジナリティを追い求めてきた。その創業以来の信念は、もちろんMステンレスボトルをつくる際にも。

 

「ステムをベースにボトルをつくろうとなって。初めて実際のボトルを見たときに、(本体の)下のほうにリバーズってレーザー彫刻されているのを見つけて。これ、かっこいいなって———」

 

当初は一般的なボトル印刷手法のシルク印刷でmuracoのロゴをプリントする予定だった。だが、このレーザー彫刻に気づいた村上氏は、その話を白紙に戻したいと言う。

 

「muracoのロゴをレーザー彫刻できないかと思って」

 

機械化の時代だが、シルク印刷もレーザー彫刻も、ひとつひとつ人間が手作業しなければならない。なかでも保温性のために極限まで薄くしているステンレスボトルへのレーザー彫刻は、針の穴を通すような機械の操作技術が求められる。過去にあったコラボレーション依頼でも、レーザー彫刻を希望する声はあったが、そのハードルの高さがネックとなっていた。

 

その旨を村上氏に告げると―――、かえって嬉々とした表情になった。

 

「なら、それうちでやりますよ」

 

muracoのポールなどに刻まれているMのロゴ。実はそれらは、自社での技術研究の末に、社内スタッフによってひとつひとつ入れられている。

 

「詳しく聞いたら彫刻範囲が大きくなればなるほど難しいと。でも、うちのスタッフならできる。ただのコラボレーションを超えて、うちならではのオリジナリティがつくれるって嬉しかった」

 

できあがったMステンレスボトル。そこにはmuracoのMのロゴが、誇らしげに、大きく、刻まれていた。

 

 

 

憧れられるオリジナリティ

なぜmuracoはオリジナルであることにこだわるのか? そこにはブランドの出自が関係している。muracoの母体は村上氏の父が創業した金属加工の会社、株式会社シンワ。工作機械の部品や建物に使用される耐震ダンパーなどを、その高い技術を信頼され制作していた。

 

転機は村上氏が家業に入ってしばらくして訪れた。ある日、父の代から40年以上にわたって取引してきた元請業社の担当から、突然「下請業者の整理をしなければいけないかもしれない」と告げられる。信頼関係だと思っていたものは、自分たちの一方的な想いに過ぎなかった。

 

この言葉をきっかけに村上氏は、自分たちの強みを、仕事を受けることにではなく、自分たちにしかつくれないものをつくる方向に大きく舵を取る。muracoがすべてにおいてオリジナリティを求めるのは、世のなかに新たな価値を提供するためだけではない。それが自分たちの存在証明そのものなのである。

 

センセーショナルを巻き起こした黒いテントも、このオリジナリティの追求のなかから生まれた。その後、国内にしばらく誕生していなかった総合アウトドアブランドとして歩むことを決めたシンワの新規事業、muraco。その命運をかけたテントをつくる際に、当初はさまざまなカラーを試した。しかし、そのいずれにもはっきりとしない不安を覚えた。最終的に、シンワの新社屋をおいた埼玉県、狭山市と入間市にある自衛隊入間基地から連想を得て、ミリタリーカラーで行くことに決めた。

 

「何度も試作品をつくらされていた工場も、『ようやくこれで生産だ!』って、すぐに最終サンプルをつくってくれて。そうしたら、届いた画像のテントが真っ黒に見えたんですよね」

 

RAPIDE X1-2P BLACK / muraco

 

それまでテントのカラーはビビットなものが主流で、黒は使ってはいけない色とされていた。もちろん、村上氏もそのことは知っていた。

 

ただ、そのモニター越しに見た色こそが、待ち望んだ、“自分たちだけの色”だった。

 

「6歳のときかな? 初めてポルシェを知って、かっこよくて、速くて、レースでも強くて、“もうこれしかない”って虜になったの。それから40年以上経って、いまもポルシェの大ファン。そのファーストインプレッションはいまでも覚えてる。そのときと同じ衝撃だったんだよね。それまでモヤモヤしていたものも一気に晴れて、気づいた。この感覚を持ってもらえるような製品でなければ、ものをつくって売っちゃいけないって」

 

憧れられる唯一無二の世界。それは、もしかして誰かのなかで一生続くかもしれない。だから。いま自分たちが手掛けている製品は、その憧れを受けるに値するオリジナリティを有しているか? この決して嘘をつくことができない問いを、いまもmuracoは自分たちに投げかけ続けている。

 

 

ステンレスボトルの理想

そんなmuracoにとって理想的なステンレスボトルとはどんなものだろうか? せっかくの機会なのでストレートに聞いてみた。

 

「ステムを選んだけど、もちろんいろんなボトルメーカーと比較した。すると、どこも『保温効力、何時間で何度以上』って謳ってるんだよね。だから、きっと、買う人はその軸ではそんなに選んでないだろうなって思った。そこはある程度みんないいはずだろうって」

 

代わりに判断材料としたのが、オリジナルのものをつくれるか、自分たちと近い目線でものづくりができるところか。その結果、Mステンレスボトルが生まれたのは先述した通りである。

 

 

そして、もうひとつ。

 

「デザインのためのデザインをしていないこと」

 

muracoではデザインは機能を追求したうえでのものである。例えば、販売しているウォーターボトルのキャップのハンドル。見た目をよくするためにカタチを決めることはしない。muracoのボトルキャップハンドルはすべて丸くデザインされている。それはどこを持っても一番センターとなり、力を分散し、持ちやすくするため。その機能を知ったうえで、デザインを好きになってほしいのだ。

 

「もっと言うと、アウトドア製品って、デザインの制約がすごく多い。家から持ち出す為、できるだけ軽く小さくしたい、紫外線・雨に晒される為、それらに対応できる素材を選びたいとか。そこにかっこいい、かわいいを先にやろうとすると、設計ができなくなるというのが僕の持論。そして、そんな多くの制約のなかから生まれてきたデザインだからこそ、基本、無駄がないことが理想だと考えている」

 

そのフィロソフィーから見たステムは、一切の無駄がなかったと言う。

 

「完全に削ぎ落していて、機能のことしか考えていない雰囲気が漂っていた。だから、デザインの面からもすごく好き。あまり言うと御社の営業の人が調子に乗るから言わないけどね(笑)」

 

 

THE “M” STAINLESS BOTTLE

今回、村上氏に話しをうかがったのは、昨年2月に東京・立川にオープンしたmuracoの旗艦店「muraco TACHIKAWA」。muracoの全製品に触れられ、世界観を体験できるショップとして、オープン以来多くのファンを生みだしている。

 

 

そこにはテントだけでなく、and wanderとコラボしたアパレルウェアや、昨年スタートしたドッグアクセサリーライン「Gris(グリ)」のアイテムも並ぶ。

 

ブランドとして立ち上がる際に、「スノーピーク以来の日本の総合アウトドアブランドになる」と決めた。その目標に確実に近づいていることを実感できる空間だ。

 

 

その店内———。2020年に発売されたMステンレスボトルは、いまもmuracoの定番アイテムとして棚に並んでいる。その周囲にいまや多くのファンを持つ「かっこいい」黒いテントに囲まれて。

 

 

 

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村上卓也(むらかみ・たくや) 埼玉県出身。埼玉県狭山市にて金属切削加工業を営む株式会社シンワ代表。2016年に自分たちの技術力を生かす新規事業としてアウトドアブランド「muraco」をスタート。慣習に囚われないスタイリッシュで革新的なアイテムを次々とリリースしている。2022年2月にブランドの世界観を伝える「muraco TACHIKAWA」をオープン。ブランド名のmuraco(ムラコ)は小学生時代のあだ名。
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muraco TACHIKAWA
所在地:〒190-0014東京都立川市緑町3番1 GREEN SPRINGS 2階 E1 202
TEL:042-506-1172
営業時間:11:00~19:00 不定休
URL:https://muracodesigns.com/pages/muraco-tachikawa
Instagram:https://www.instagram.com/muraco_tachikawa/

 

NEWS from muraco

WEEKEND SPECIAL 2023 SPRING
毎年本社・工場にて開催しているWEEKEND SPECIALを本年も開催いたします。muraco製品が生まれる工場の見学や今年リリース予定の新作発表会などのコンテンツを多数ご用意しております。そして今回は、実際にキャンプを楽しんでいただくキャンプイベントも開催します。muracoをより深く知っていただく2日間。ぜひご来場ください。
URL https://journal.muracodesigns.com/4291/information/

開催日時
2023年5月13日(土)10:00 – 19:00
2023年5月14日(日)10:00 – 17:00

入場料
無料

会場
FACTORY BRANCH (muraco本社併設の直営店)
埼玉県狭山市根岸649-7

アクセス
【自動車】圏央道狭山日高ICより5分
店舗隣地の駐車場をご利用ください。